ヒスブルに“春”をもたらした、Sabão(シャボン)初のワンマンライヴ『Dedicate to Hysteric Blue ~15 Years Compile~』
2014年4月6日(日)、恵比寿リキッドルームで行われたSabão(シャボン)初のワンマンライヴ『Dedicate to Hysteric Blue ~15 Years Compile~』へ行ってきました。
そもそもSabãoとは、元Hysteric BlueのTamaと楠瀬タクヤの新ユニット。楽曲依頼をきっかけに2012年頃から活動をスタート。楽曲のタイアップやイベント出演など、基本的にコラボレーションをメインに活動しているので、ワンマンライヴは今回が初めてでした。
ライヴの1曲目は、ヒスブルの楽曲『Reset me』。ワンマンが決まった時から、この曲がキーになるのではないかと勝手に思っていたのですが、まさかの1曲目!歌い始めた瞬間に、その思いは確信に変わりました。
『Reset me』は、2001年8月にリリースされたHysteric Blueの10枚目のシングル。2ndシングル『春~spring~』や4thシングル『なぜ…』に比べると世間的な認知度は低いですが、何を隠そう、僕が好きなヒスブル曲ベスト3に入る一曲なのです。
1998年10月のデビューから2003年9月の活動休止、そして翌年3月に解散となったバンドの歴史の中では後期に位置する曲で、それまでのヒスブルのイメージを覆すかのような、実験的な楽曲が目立った3rdアルバム『bleu-bleu-bleu』をリリースした後のシングル。その歌詞は、表向きには新しいスタートを後押しするポジティブな内容でありながら、その背景には、バンドの方向性などさまざまな葛藤があったことが窺える内容で、非常に強く印象に残っています。
『Reset me』にこんな一節があります。
ボクが笑うとみんなも笑うから
振り向いてここに帰ってこよう
楽しい夢を 見れなくなる前に
素晴らしいこの場所に印をつけて
スタートしよう 忘れないで
Reset me ゼロに戻したら
また次のイチをさがそう
つぶった瞳で 見えるもの
忘れずにずっととっておこう
ボクが変わると みんなも変わるから
立ち止まらないよ 一歩進もう
大人になっても 忘れないように
素晴らしいこの場所に印をつけて
スタートしよう また会えるように
解散をにおわせる歌詞が、とても強烈。このシングルをリリースした後も2年間は活動を続けるわけですが、当時のことを語ったSabãoのインタビューを読むと、だいぶ早い段階からバンドとしては危うかったようです。はー、感慨深い。
そんな『Reset me』から始まった、Sabãoのワンマンライヴ。ヒスブル解散後、それぞれ一度“ゼロ”に戻して“新しいイチ”を見つけて、それぞれが“アップデート”して、そうしてまた再び、“この場所”に戻ってきてくれた。こうしてまた、2人に逢えた。そんな想いが駆け巡り、ライヴ冒頭から感極まってしまいました。もう反則だよ、ほんとにもう。
その後も、『ふたりぼっち』や『グロウアップ』『RUSH!』といったシングル曲から、ヒスブル時代でもライヴでほとんど演ったことがないというアルバム曲『Fake Five』や、ヒスブル最後のオリジナルアルバム収録曲『旅路』(この曲の歌詞も、アップテンポなチューンとは裏腹に涙が込み上げる…)など、ファンにとって嬉しい楽曲ばかり。Sabãoの楽曲もひと通り聴けただけでなく、スペシャルゲストで、松隈ケンタさん、人時さんも登場し、貴重なコラボレーションも観ることができました。なんだったんだろう、あれは。オーラっちゅうんですかね。めちゃくちゃカッコよかった。
さらに来場特典として、新曲CDのプレゼントもありました。そのタイトルは『今~present~』。『春~spring~』にちなんで名付けられたとのことで、この“present”には贈り物としての「プレゼント」という意味と、「現在」や「今」といった意味も込められているんだそう。というか、そもそも『春~spring~』自体がダブルミーニングだったとのこと!全く気づきもしなかったよ。タクちゃん、天才!!
この際だから説明しておかないとと思うのですが、「春~spring~」というタイトルに関しても、僕は同じ想いを込めているのです。springには春の他に温泉とか、湧き出るという意味もあり、「春が来るたびにこの思い出が湧き出してくるような気持ち」を表現したかったダブルミーニングなのです。
この『今~present~』はアンコールの1曲目に演奏してくれたのですが、メロディの良さも然ることながら、その歌詞が本当に素晴らしい。一行たりとも無駄がない。隙がない。
彼女じゃなくても まして家族じゃなくても
相談してみるだけで 晴れてくように
私じゃなくても良いのかもしれないけど
少しでも心 華やいで欲しかったんだ
あなたはあなた 役割があるから
私は私の歌を届けて行こう
例えば、あなたじゃなきゃ!とか、ずっとあなたと一緒!というような、瑞々しいけれど衝動的で刹那的な感情ではなく、大人ならではのほどよい距離感、互いを尊重した先にある信頼感に溢れているんですよね。10代だった『春~spring~』の頃からさまざまな、本当にさまざまな出来事を経験して辿り着いた、“今現在”を歌っているんです。
当時の、そして今日に至るまでのメンバー二人の苦しみや悲しみや苦労は想像しかできないけれど、それと同じようにファンも辛かったし悲しかった。でも今こうしてまたTamaちゃん、タクちゃんに逢うことができた。タクちゃんの曲をTamaちゃんが歌う。シンプルだけどこの尊い事実が、ただただ嬉しいんですよね。「私…歌が好き…」、そんなことを体現するかのように、ライヴ中ずっとTamaちゃんが笑っていて楽しそうで幸せそうだったし、なによりも、僕が楽しかったし幸せでした。
『今~present~』に続いて、ライヴ最後の曲として『春~spring~』を披露。最新曲と代表曲を続けて歌ったこともとても意義深くて、ライヴから一週間経った今もこの2曲を繰り返し聴きながら、その喜びを噛みしめています。
内容もその意義も特別だった、Sabão初のワンマンライヴ。Tamaちゃん、タクちゃん、歌い続けてくれてありがとう。音楽を続けてくれて、ありがとう。2014年4月6日、この日、Sabãoがヒスブルに春を届けてくれた。
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◆セットリストやライヴ写真も掲載。ナタリー、素敵。
●ナタリー - Sabao、初ワンマンで「春~spring~」など21曲披露
◆こちらも充実のライヴレポート。あの熱狂を思い出す。
●【ライブレポート】Sabao、ヒスブルに捧げた15年を経て、新たな一歩 | Sabao | BARKS音楽ニュース
◆ヒスブルからSabãoに至るまで、2人の想いが語り尽くされた良インタビュー。
●Sabão、年末リリースのシングルをハイレゾ配信開始&インタヴュー - OTOTOY
◆2013年10月27日に行われたTamaソロライヴの詳細なライヴレポート。セットリストも掲載されて素晴らしい!!
●Tama スペシャルワンマンライブ shibuya eggman : みこぶろぐ
◆ヒスブル時代の代表曲を、Sabão ver.で!
「どこまでオリジナルに似せられるか。とことん完コピを目指した」とタクちゃんがラジオで語っていたとおり、驚くほどオリジナルに近い!通常、セルフカバーとなるとアレンジが加わってしまうことが多いけれど(普通なら嬉しいこと)、殊にヒスブルに関しては、“あの頃”の音源が流通していないから、オリジナルに忠実であることはとても意味のあること。ファン以外の世間一般の人が「懐メロ」として聴く場合には、やっぱり“あの頃”の音である必要があるんですよね。でもそのヴォーカル、サウンドのディテールには、15年を経て磨かれたお二人の確かなクオリティが感じられますよ。
◆その他、Sabãoオリジナル曲もたくさん配信されているので、こちらからどうぞ